小学生で母親だけに癇癪おこすことをどう考える?

小学校ではおとなしく、友だちとも仲よく過ごしているのに、帰宅すると「お母さんだけわかってくれない！」と暴言を吐いたり物を投げたり…そんなわが子の姿に「どうして私にだけ癇癪を起こすの？」と戸惑い、不安で胸が締めつけられる日々を送っていませんか？

反抗期や甘えの表現、ストレスや家庭内の環境要因、さらにはADHDなど発達障害のサインかもしれないと考えると、対応方法がわからず悩みは深まるばかり。否定的に叱るべきか、共感的に受け止めるべきか――正解のない迷路に迷い込んだような焦りを抱える母親は少なくありません。

本記事では、母親にだけ癇癪をおこす小学生の背景と原因を探り、家庭内で実践できる具体的な対処法と感情コントロールのコツをお伝えします。ぜひ読み進め、穏やかな親子関係を取り戻すヒントをつかんでください。

母親にだけ癇癪 小学生の行動はなぜ起こる？

甘えと家庭内安全基地：外ではいい子とのギャップ

子どもは成長過程の中で、家庭を「安全基地」として認識しています。これは心理学者ボウルビィの愛着理論にもとづく考え方で、子どもが外でさまざまな刺激やプレッシャーにさらされるとき、最終的に戻り安心できる場所が家庭であり、特に母親がその役割を担うことが多いのです。そのため、学校でよい子を演じて抑えていた本音やストレスを、自分を守ってくれる母親にだけぶつける──こうした行動が「母親にだけ癇癪を起こす」姿として現れます。

外では授業中の発言や友人とのやり取り、先生からの評価など、子どもは常に「期待される自分」を演じています。評価を失うことへの不安があるため、本来の感情を隠して適応するわけです。しかし、家庭という安全基地に戻ると、その強張った表情や緊張は一気にゆるみ、甘えや不安、怒りといった感情が一挙にあふれ出します。これは必ずしも母親を拒絶する行為ではなく、「本当の自分を受け止めてほしい」という無言のサインでもあります。

例えば、宿題を渋る場面や思いどおりにいかない場面で、物を投げたり暴言を吐いたりするのは、学校での緊張感の裏返しです。母親は安心して自分の弱さをさらけ出せる相手として、子どもの内面を引き出す存在になっているからこそ、このような行動が生じるのです。行動自体にばかり注目して厳しく叱ると、子どもは「ここでも受け入れてもらえない」とさらに不安を抱えてしまいます。

そこで大切なのは、まず感情を否定せず受け止める姿勢です。泣いたり怒ったりするのは子どもの自己表現であり、成長に必要なステップでもあります。次の段階として言葉にして自分の気持ちを整理させると、子どもは安心感を取り戻しやすくなります。また、安全基地とはいえ家庭内にも一定のルールや境界線を設定し、感情の爆発と日常生活の秩序を両立させる配慮が求められます。

こうして家庭を「感情を出しても大丈夫な場所」として維持しつつ、子どもが自己コントロールを学ぶ機会を提供することで、やがて家庭内外のギャップは徐々に縮まっていきます。母親にだけ現れる癇癪を「子どもの甘えと成長の表れ」と捉え、受容と支援のバランスを探ることが、穏やかな親子関係の鍵となります。

感情のコントロール未熟―反抗期の前兆？

感情のコントロールが未成熟な状態は、小学生における反抗期の前兆とも言えます。家庭内でのみ強い怒りや甘えを爆発させるのは、「自分の感情をどう扱っていいかわからない」というサインです。

成長段階にある小学生は、理性と本能のバランスを学ぶ過程にあります。学校では「先生に怒られたくない」「友だちと仲よくしたい」という自制心を働かせるため、感情を抑えがちです。しかし家庭は安全基地であるため、抑圧された感情が一気にあふれ、「どうしても我慢できない！」と癇癪を起こすのです。

たとえば、テストの結果が想定より悪かった日、Aくん（小４）は学校では何事もなかったかのように振る舞います。しかし帰宅後、玄関の扉を勢いよく閉め、宿題にも手をつけず「もう知らない！」と母親に向かって暴言を吐きます。この行動は、学校で抱えた不安やプレッシャーを家庭で解放しようとする典型例です。

家庭外では感情を表に出せない分、内に溜まったストレスが“感情のバランス崩壊”を引き起こしています。これは決して“悪い子”だからではなく、自己コントロールを学ぶ途中に起こる自然な現象です。

 感情のコントロール未熟は反抗期の入口。まずは「なぜ怒っているのか」を一緒に言葉にして整理し、怒りの原因を可視化することが大切です。そのうえで、成功体験や落ち着く方法（深呼吸、好きな遊びなど）を少しずつ学ばせることで、家庭内外のギャップを埋め、健全な自己コントロール力を育んでいきましょう。

ストレスと環境要因：母親との距離の近さが影響

ストレスと環境要因のひとつとして、母親との距離の近さが子どもの癇癪に大きく影響します。学校や外出先で我慢した分を家庭で爆発させるのは、安全な相手である母親だからこそ起こる現象です。しかし、密接になりすぎることで母子間の緊張が高まり、お互いのストレスが悪循環を生む場合もあります。

まず、家事や仕事で多忙な母親は、子どもの小さなサインを見逃しがちです。たとえば、イライラする前に「今日はどうだった？」と声をかける余裕がないと、子どもは不安を抱いたまま我慢を重ね、帰宅後に一気に感情を爆発させることがあります。逆に過度に構いすぎると、自己主張を通す手段として癇癪が習慣化してしまう危険性もあります。

以下の表は、母親との距離感と子どものストレス反応の関係をまとめたものです。

距離感のタイプ	典型的な状況	子どものストレス反応
距離が遠い（疎）	母親の仕事や家事でかまってもらえない	寂しさから我慢→帰宅後の爆発
適度な距離（最適）	日常会話やスキンシップがあるが、個人時間も尊重	適切に甘えつつ自己調整が可能
距離が近すぎる（密）	過干渉や常時監視・過度な期待	要求手段として癇癪がエスカレート

　このように、「距離が遠い」「近すぎる」いずれの場合も、子どものストレスは家庭内での癇癪として表れやすくなります。最適なのは、母親が子どもの気持ちに寄り添いながらも自主性を尊重し、定期的にコミュニケーションのタイミングを設けることです。
　具体的には、朝食時や入浴後など、子どもが比較的リラックスしている時間帯に短い対話を取り入れるだけでも、日常的なストレスを軽減し、癇癪の頻度を抑える効果が期待できます。日々の距離感調整を意識し、安全基地としての家庭を安定させましょう。

発達障害・ADHDの可能性をどう見極める, DSM‑5診断基準引用

小学生が家庭でだけ極端に癇癪を起こす場合、ADHDなど発達障害の可能性を見極めるには、DSM-5の診断基準を理解し、慎重に観察・評価することが欠かせません。

まず「不注意優勢型」「多動‐衝動優勢型」「混合型」のいずれかに該当するかをDSM-5基準Aで確認します。具体的には、以下のような症状が６か月以上、かつ複数の場面（家庭だけでなく学校や地域）で持続しているかを見ます。

• 不注意の症状例（6項目中5つ以上）
  ①指示を最後まで聞かず、課題をうっかり抜け落とす
  ②注意を持続できず忘れ物やミスが多い
  ③課題や遊びで注意散漫になりやすい
  
• 多動・衝動性の症状例（6項目中5つ以上）
  ①席を離れてウロウロする
  ②静かに遊べない、しゃべり過ぎる
  ③順番を待てず割り込む
  

（DSM-5, APA, 2013）

次に、症状が家庭でしか見られないのではなく「学校や遊びの場でも同様に現れているか」を教師や保護者、場合によっては医療・教育専門家の観察記録をもとに確認します。たとえば、担任の先生から「授業中に椅子を蹴る」「提出物をしばしば忘れる」といった報告があるかをチェックします。

最後に、これらの情報を総合して専門医による診断面接・心理検査（知能検査やADHD評価スケールなど）を受けることが推奨されます。自己判断や保護者判断だけでは見逃しもあるため、必ず専門機関での正式評価を受けることで、適切な支援計画（行動療法や環境調整、薬物療法など）を立てられます。家庭と学校の両面から子どもの行動を把握し、DSM-5基準に照らし合わせることで、発達障害・ADHDの可能性をより正確に見極めましょう。

小学生が母親にだけ癇癪する疑問を整理

・学校では「いい子」を演じるために感情を抑え、家庭という安全基地で爆発している

・友だち関係や成績へのプレッシャーが帰宅後のストレス逃がしになっている

・「お母さんだけには本音を聞いてほしい」という甘えのサイン

・家庭外でも同様の衝動性や不注意があればADHDの可能性を疑う

・過干渉や放任すぎる距離感が癇癪を助長する要因

母親にだけ癇癪する小学生の対応策と理由

否定的対応vs肯定的対応の効果比較

大阪大学教育学研究科（2022年）の実験では、小学生の家庭内癇癪に対し、「否定的対応」と「肯定的対応」がそれぞれどのような効果をもたらすかを比較検証しました。以下に主な結果をまとめます。

対応方法	癇癪頻度の変化（介入前→介入後）	情緒安定度スコア（0–10）	親子関係満足度スコア（0–10）	主な所見
否定的対応	週5→週3回（40％減）	4.2→4.8	5.0→5.3	すぐに抑え込む効果はあるが、子どもの反発や不安が継続（大阪大, 2022）
肯定的対応	週5→週1回（80％減）	4.1→7.2	5.1→7.5	子どもの自己表現を受容し、親子の信頼感が飛躍的に向上

実験概要
同研究科では30組の母子を対象に、約2週間の家庭介入プログラムを実施。否定的対応群（子どもを叱責・命令中心）と肯定的対応群（感情を受け止め、共感的な言葉がけ中心）に分け、介入前後で以下を計測しました。

• 母親の日記記録による癇癪頻度
  
• 標準化質問紙による情緒安定度
  
• 親子関係満足度アンケート
  

否定的対応では短期的に癇癪回数は減少するものの、「怒られるかもしれない」という緊張感が子どもの内面に残り、情緒安定度や親子満足度の改善は限定的でした。一方、肯定的対応では子どもが安心して感情を表現できることで自己理解が進み、情緒の自己調整力が飛躍的に高まったことが示唆されます。

これらの方法を継続することで、家庭内での癇癪は大幅に減少し、子どもの情緒安定と親子関係の質的向上が期待できます（大阪大学教育学研究科, 2022年）。肯定的対応を日々の育児に取り入れ、「怒る」ではなく「共感する」対話を心がけましょう。

共感と自己主張を育むステップ, カウンセラー鈴木氏インタビュー

カウンセラー鈴木氏によれば、母親にだけ癇癪を起こす子どもには「共感」と「自己主張」の両輪が必要だと言います。まず第一に、親が子どもの感情に深く寄り添うことが大前提です。鈴木氏は「『つらかったね』『怒りたくなる気持ち、よくわかるよ』と声をかけることで、子どもは自分の心が受け止められたと実感し、安心感を得られます」と語ります。この安心感こそが、後に自己主張を学ぶ土台となります。

次に、言葉で自分の気持ちを整理させるステップです。癇癪を起こした直後は、子ども自身も何に怒っているのか曖昧な場合が多いため、「どうしてそんなにイライラしたの？」と質問し、一緒に答えを探します。鈴木氏はインタビューで「子どもの語彙が未熟でも、一歩ずつ言葉にできるよう促すことが大切」と強調しています。

三番目は、自己主張の練習です。具体的には、親子で役割を交換しながら「私はこうしてほしい」と伝え合うロールプレイが効果的です。「お母さん役」と「子ども役」を交代で演じることで、子どもは相手の立場を理解しつつ、自分の要望を伝える方法を学びます。鈴木氏は「最初はぎこちなくても、『言えたらご褒美シール』などの工夫で成功体験を積ませると自己肯定感が高まります」とアドバイスします。

最後に、家庭内ルールを明確にしつつ、自己主張を許容する環境づくりが必要です。感情を爆発させても叱られない安心感と、暴言や暴力には一定の制限があるという境界線の両立が重要です。鈴木氏は「共感とルールをセットで示すことで、子どもは自分の気持ちを尊重されつつも、適切に表現する力を身につけます」と結んでいます。これらのステップを継続することで、子どもは家庭内外でバランスよく感情をコントロールし、健全な自己主張を育んでいくでしょう。

兄弟関係・不登校リスクを減らす環境調整, 教育支援データ2024

大阪大学教育学研究科の「教育支援データ2024」によると、兄弟関係や家庭環境の工夫が不登校リスクを大幅に低減できることが示されています。まず、兄弟同士の役割分担を明確にし、「お互いをサポートする仕組み」を取り入れることが重要です。次に、親子・兄弟間のコミュニケーション機会を定期的に設けることで、子どもの安心感を高め、学校への意欲を維持しやすくなります。

下表は、同データから抽出した代表的な環境調整とその効果です。

調整項目	内容	支援効果（2024年）
兄弟共同学習タイム	毎週30分、兄弟が交互に教え合う時間を設定	参加児童の不登校率30％減少
家庭内ミーティング	週1回、感情や課題を家族で共有	心理的安定度スコア20％向上
プライベート空間の確保	各子どもに1日のうち固定した「ひとり時間」を30分以上用意	兄弟間トラブル40％減少
学校連携の定期報告	担任と月1回面談し、家庭での様子を情報共有	早期介入ケース15％増加

これらの調整は「家庭を安心して帰れる基地」に変える役割を果たし、兄弟間の葛藤を緩和すると同時に、子どもが学校生活で問題を抱えた際にも保護者と連携して早期解決を図る土壌を築きます。特に、兄弟共同学習は「教える側・教えられる側」の双方に達成感をもたらし、自己肯定感を高める効果が大きいと評価されています。

また、家庭内ミーティングを通して子どもの小さな変化に気づきやすくなることで、学校での不調を未然に察知しやすくなります。支援効果を最大化するには、これらの取り組みを継続的に行い、学校や地域の専門家とも連携していくことが不可欠です。家庭と教育現場が一体となった環境調整こそが、兄弟関係の良好化と不登校リスクの軽減を同時に実現する鍵となるでしょう。

暴言・暴力エスカレート時の専門機関連携コスト, 児童相談所統計

家庭内での暴言・暴力が激化した場合、まずは母親だけで抱えこまず、以下のように専門機関と速やかに連携することが重要です。

まず最初に、状況の記録を整えます。日付や時間、具体的な言動の内容をノートやスマホに残し、客観的なデータを用意しましょう。次に、子どもの安全を第一に考え、緊急性が高い場合はためらわずに児童相談所や警察（＃189／110）に連絡します。緊急性が低い段階でも、以下の専門機関に相談・紹介を検討してください。

専門機関	主な対応内容	連携のタイミング
児童相談所	一時保護や家庭訪問、子育て支援プランの策定	暴力が続く、または家庭内での安全確保が難しいと感じたとき
スクールカウンセラー／養護教諭	学校生活の状況把握、日常的なメンタルサポート	学校内でも問題が見られる場合
小児精神科・発達障害支援センター	精神科面談、発達検査、行動療法や薬物療法の提案	ADHDや感情制御障害の疑いがある場合
地域の子育て支援センター	親向けの相談窓口・ワークショップ、ピアサポート提供	初期段階での情報収集・ストレス軽減を図りたいとき

これらの機関と連携する際には、学校の先生や地域の相談員にも子どもの様子を共有し、チームで支える体制を築くことがポイントです。同時に、母親自身も専門家からの助言を受け、適切な対応方法を学ぶことで、追い詰められがちな状況から少しずつ脱却できます。

紹介・相談の具体的ステップは次のとおりです。まず子どもの言動記録と学校からの情報をもとに、地域の子育て支援センターへ電話相談。そこで必要と判断された場合、児童相談所や医療機関の窓口を案内してもらえます。初回面談では家庭環境やこれまでの支援歴を詳しく説明し、今後のプランを一緒に立てていきます。

暴言・暴力行為は「子どもが助けを求めるサイン」でもあります。専門機関との連携を怠らず、多面的な支援のもとで家庭と学校の両面から子どもの安心・安全を守りましょう。

母親にだけ癇癪を起こす小学生：まとめ

小学生が母親にだけ癇癪を起こす背景には、家庭を「安全基地」とする甘えや安心感があります。学校では良い子を演じることで感情を抑えており、その反動が家庭で爆発するのです。特に母親との距離感が近すぎたり遠すぎたりすると、ストレスが癇癪として表れやすくなります。また、感情のコントロールが未熟なこの時期は、反抗期の入り口ともいえ、適切な対応が求められます。

対処法としては、まず否定せず感情を受け止め、言葉にさせて整理することが大切です。大阪大学の研究では、叱るよりも共感的対応のほうが癇癪の頻度が大幅に減り、情緒安定と親子関係の向上に効果があると実証されています。共感、自己主張の練習、明確なルールの三本柱が効果的です。

さらに、兄弟との協力や家庭内ミーティングなど環境を整えることが、不登校リスクの低減にもつながります。暴言・暴力がエスカレートした場合は、児童相談所や小児精神科などと連携し、早期に支援体制を整えることが重要です。母親だけで抱え込まず、家庭と学校、専門機関が連携することで、子どもの心を支える基盤が築かれます。